IDC大塚家具と蒔絵箪笥「柳橋水車図」

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IDC大塚家具と蒔絵箪笥「柳橋水車図」

和箪笥3.5尺(左) 幅1055 奥行き490 高さ1660(mm)
和箪笥4尺(中) 幅1195 奥行き490 高さ1660(mm)
洋箪笥(右) 幅1045 奥行き605 高さ1660(mm)
完成年1978年

総桐箪笥の製造を前身とする当社は、現代の家具・インテリアだけではなく、日本の優れた伝統を絶やすことなく後世に継承させるため、各地の伝統工芸、伝統家具を積極的に取り扱い、その素晴らしさを広く伝えるべく努めてきました。そうした活動の一環として、当社は蒔絵箪笥「柳橋水車図」を所蔵しております。

この三棹一組の箪笥に描かれた技法、蒔絵とは、奈良時代より続くわが国で始まった独自の工芸技術であり、他国に類を見ない独自の技法で完成した漆芸技法です。三十余年前、その最高の技術を尽くしてつくられた空前絶後の大作が、この蒔絵箪笥「柳橋水車図」です。木地となる木材の乾燥から蒔絵の完成までに延べ十余年の歳月をかけ、蒔絵師はいうに及ばず、木匠に多々納邦男、金工師に金江宗観と当代随一の名匠を配し、それぞれの卓越した技術を結集して製作されました。

なかでも実現不可能といわれた蒔絵工程を、あえて引き受けた蒔絵師 井上英雄が、蒔絵の最高峰にふさわしい最高の構図として選んだのが、長谷川等伯をはじめとして長谷川派が好んで描いた「柳橋水車図」でした。もともと屏風絵であったこの構図を、絵柄の迫力や調和を損なうことなく、箪笥の寸法に合わせていかに表現するかが一番苦心したところと、完成当時の井上は語ったといいます。

蒔絵は、漆や金銀など扱いにくい素材を使って繊細な表現をするため、大変時間と手間がかかる技法です。その中でも最も技術を要する肉合蒔絵の技法を用い、籠部分に使われた螺鈿は高上げした漆の中に埋め込み、欄干は大胆な切金を使用、水車は高上げした上に銀で凹凸のある水しぶきをあしらい躍動感を表すなど、多彩な蒔絵技法を駆使して表現しています。芸術と家具がひとつになった姿が、そこにはあります。

木匠 多々納邦男

1942年 島根県生まれ
1961年 広島県府中市松岡木工(現 松創)に入社
1973年 昭和天皇が岩手県植樹祭に行幸の際、県立岩手記念館において桐箪笥を天覧に供し、同館に永久保存される。
1995年 今上天皇・皇后両陛下広島県植樹祭に行幸の際、桐箪笥を天覧に供する。

金工師 金江宗観

1908年 京都府生まれ 東大寺所蔵の金工品をはじめ、桂離宮の装飾金具の修理に携わる。選定保存技術保持者。

蒔絵師 井上英雄

1937年 京都府生まれ 父親が蒔絵師の井上金花氏。創人社メンバーの上原清氏に師事。日展入賞6回をはじめ、多くの美術展、工芸展に出品し受賞。

※創人社・・・1945年に京都の漆芸作家により結成。新しい漆芸を切り開こうと、番浦省吾、黒田辰秋、久保金平、東端真策、岡田章人、上原清、清原太郎、竹中微風らが結成。

蒔絵の種類や技法

研出蒔絵(とぎだしまきえ)

金銀粉を粉固めしたうえに蝋色漆を塗り、金銀の文様、絵画等を研ぎ出したもの。研磨後の表面は平滑である。粉の精製技術が未熟で粒子が粗かった平安時代まではこの研出蒔絵が主流であったといわれている。

平蒔絵(ひらまきえ)

専用の漆を用いて絵、文様を描き、直ちに金銀の丸粉を毛棒または粉筒で蒔きつけて乾かした後、拭漆または粉固めして粉を固着し、炭粉と引砥粉をつけ簡単に磨くものと、椿炭にて研ぎ出して引砥粉にて磨くものとがある。

高蒔絵(たかまきえ)

文様部分を高く盛り上げて、浮き彫り状に表現したもの。

肉合蒔絵(ししあいまきえ)

高蒔絵と研出蒔絵を合わせた技法。研出蒔絵と異なり、研磨後の表面は平滑にならない。肉合蒔絵の下地塗としては金地、平目地、梨地等の方法があり、本蒔絵を応用したもの。それらの上に描かれる高蒔絵は豪華絢爛を極め、他に比類ない蒔絵独特の工芸美術である。

螺鈿

貝は鮑貝、夜光貝、蝶貝、蜆貝などが使われる。磨り減らして膠液等で付着し、そのうえに漆を塗り研ぎ出す。螺鈿は桃山時代よりふんだんに使用され、美的工芸品として賞賛されている。

切金

金銀の薄板を細かく切って蒔絵の中におく技法。

(右) 和箪笥(左)の水車部分。蒔絵の塗りを重ねた立体的な表現になっている。
(中上)絵柄の中に巧緻に取り込まれた金具。 金工師の手仕事が生み出したもの。
(中下)蒔絵箪笥「柳橋水車図」の内部。 裏扉に千鳥が描かれている。
(左) 螺鈿によって表現された籠部分。 絵画を超えた迫力ある立体感が、臨場感を呼び起こす。

絵屏風が物語る美術と不可分の日本調度

屏風は古来より風をよけたり、視線を遮る室内調度品として利用されるだけでなく、表面に華麗な色彩や墨の濃淡を用いてさまざまな絵が描かれたものは、装飾用や贈答用に重宝されてきました。天皇の即位をはじめとした宮中儀礼や、貴族や将軍家の婚礼調度品には、当時の最高の絵師が腕をふるいました。等伯の描いた障壁画や屏風も、いわば室内装飾であり、純粋な絵画というよりは家具や道具に近しい存在だったといえるでしょう。蒔絵の手法によって、家具の上に日本画を映し出すという表現方法も、日本人の伝統に沿った自然のものであったといえます。

芸術性と実用性の両面を持つ美術品としての家具調度。先人たちはそれぞれの造形や装飾の美しさを愛でながら、生活の中で活かす楽しみを大切にしてきました。

西洋のライフスタイルが定着した現代にあっても、日本伝統の文化と技を日常に感じて継承していくこと、それが大塚家具の願いであり誇りなのです。

蒔絵箪笥「柳橋水車図」は、有明本社ショールームに展示しております。

IDC大塚家具はこの箪笥を所蔵する縁により「没後400年 特別展 長谷川等伯」に創業40周年を記念し特別協賛致しました。
期間中(2010年2月23日~3月22日)は、東京国立博物館 平成館ラウンジに特別展示されました。

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